代表税理士ブログ

三和音と30年

久留米の情報誌SECONDにコラムを載せてもらいました。(2023年1月)
 
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人はどうでも良いことを覚えてるもので、
もう、30年以上前の話になる。
 
日曜日というのは、のんびりしているのだが、子供向けの番組が多くある。
だから、日曜の朝はテレビつけっぱなしだった。
 
その日、弟がお目当ての番組を見た後、テレビはそのまま日曜の食卓を照らしていた。
誰も注目していない画面には「題名のない音楽会」という名前のクラッシック音楽番組が流れていて、僕は何気なく画面を眺めていた。
 
そのときテレビのスピーカーから耳に”8bit音源”が飛び込んできた。
 
流行に疎い僕でも知っている当時大流行だったファミコンのドラクエ(ドラゴンクエストというゲーム)の音楽だ。
 
いつもはクラッシックを中心にやっているこの番組、子供が見ることを分かっていて、遂にファミコンの音楽をやるのかと、退屈していた僕の目は光を取り戻したのである。
 
 
 ところが、司会者がマイクを持ち「皆さん聞いて頂きましたか?なんと単調な音楽でしょうか? 今の子供たちは、こんな味気ない音楽を聴かされているのですよ・・・・」「さあ、私たちは本当の音楽を聴きましょう」と、まさかの当て馬にされる、ドラクエだったのである。
 
 
 子供心に、これはいけないのではないかと、何もわかっていないのはどっちなのだろうと思った。
 
 確かに、ファミコンの音源は味気ない電子音だ。
だが、当時のファミコンが同時に出せた音はたった3つだけだったのである。
 
さらに言えば、そのうち1音は”ざくっ”や”どかっ”といった効果音に使われていたので
三和音どころか実質は二和音だったのである。
 
そのような、制約条件の中で、一体どれだけの人が音楽を成立させることができたのだろう。
 
 ドラクエの曲を作ったのは”すぎやまこういち”という人だ。
 
 皆さんは東京オリンピック2020で各国の選手団が入場するときに使われた音楽は何だったか覚えているだろうか? 
 
最初にギリシャ選手団が入ってくるときに流れてきたのは、この”すぎやまこういち”が作ったドラゴンクエストの「序曲・ロトのテーマ」。
 
馬鹿にされた曲が作曲後30年かけて世界の舞台オリンピックまで登ったのだ。どちらが正しかったのだろう。僕はどちらも正しいと思う。
 
 
 ”すぎやまこういち”は東京オリンピックが終わった1月後の2021年9月に90歳で亡くなった。
 
あっちの世界では、あのときけちょんけちょんに、けなしていた”題名のない音楽会”司会者の黛敏郎と仲良くしているだろう。
 
だってドラクエの曲は日本のたくさんの都市でオーケストラで演奏されている。2人とも音楽が好きだったのだから、仲が悪いはずはない。
 
 
 
 
すぎやまこういち(1931-2021)代表曲:亜麻色の髪の乙女、ドラクエ楽曲、恋のフーガ、競馬G1ファンファーレ CM曲 他多数

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